交通事故やスポーツによるケガが引き起こす頭痛の原因は脳脊髄液減少症かも!

交通事故やスポーツ外傷が原因の脳脊髄液減少症という病気

こんにちは、ナオルです。以前、『5つのタイプがある「むち打ち症とは」、 その種類と症状の違い』で、むち打ち症(外傷性頚椎捻挫)にもいくつかのタイプがあることをお話しました。

そのうちのひとつに、交通事故スポーツによるケガが原因でむち打ち症となり、その後遺症で苦しんでいる患者さんの中に、「脳脊髄液減少症」(別名:低髄液圧症候群とも言わる)という病気があることが解っています。

クッションの役割を果たしている脳脊髄液が、脳脊髄液腔から漏れてしまう

人間の脳や脊髄は、無色透明な「脳脊髄液」で満たされていて、主に脳や脊髄を衝撃から守るクッションの役割を果たしています。

この脳脊髄液が、交通事故やスポーツによるケガなどの外力(衝撃)によって脳内に強い圧力がかかると、脳脊髄液腔から漏れてしまうことがあります。

脳脊髄液は、脳と脊髄の周りを一日に3回循環しますが、前述のような原因でその髄液が減少すると、髄液の量が減少した分、髄液圧が下がります。

それによって脳や脊髄から伸びる神経に影響を及ぼし、その結果、頭痛、頚部痛、目眩、吐き気、倦怠感、腰痛、記憶障害、頚関節痛、胃腸障害、頻尿、脱水症状などに襲われて、日常生活や就労、学業などに支障をきたし、就労不能や不登校になることもあります。

通常の検査では異常が認められず、「怠け病」や「仮病」と見られてしまう

正しい診断がされないしかし、この脳脊髄液減少症は、MRIなど様々な検査を行っても異常を認められないことが多いため、残念ながら医療の現場でもまだ認識が低いのが現状で、患者の方が症状を訴えても、うつ病などの精神障害、起立性調節障害、自律神経失調症などと診断されてしまうことがあります。

ましてや、一般の方々の認知度はもっと低いため、患者さんが症状を訴えても、周囲からは、だらしない、怠けている、仮病だなどと思われてしまうことが多く、このことが患者さんをさらに苦しめる要因ともなっています。

そうした周囲に理解されない患者さんの苦痛は、体調不良に加えて、精神面でも落ち込んでしまい、日常生活を意欲的に生きる力が失せてしまうばかりか、中には人生に絶望する人もいます。

保険適用の問題も患者さんを苦しめていた

こうした周囲の不理解に加えて、脳脊髄液減少症の患者さんを苦しめている別の要因として、保険の問題がありました。

通常、私たちが病気になった時、「診療報酬制度」つまり保険が適用されるかどうか?ということはたいへん大きな意味合いを持ってきます。

国民健康保険や、共済組合・会社全体で加入する健康保険といった社会保険(強制保険)に加入しているだけで、万一病気になっても治療費の多くは国が負担してくれるからです。

そして、この診療報酬制度に登録されている病気とは事実上「国が認めている病気」ということになり、生命保険、その他損害保険、労災、交通事故に遭った場合の自賠責保険に至るまでその影響が出てきます。

ブラッドパッチが保険適用となった

しかし、残念ながら脳脊髄液減少症はまだ「国が認めた病気」ではなかったため、患者の方々は病気そのものに加えて、こうした治療費や保険の問題でも苦しむことになっていました。

このような問題を解決しようと「認定NPO法人脳脊髄液減少症患者・家族支援協会」では、この病気を全国的に認知してもらうための啓発活動を行い、その結果、治療を受けて症状が改善する患者の方が増えていき、各地に患者会も設立されています。

こうした協会の活動は、行政や国をも動かし、協会設立から9年後の2011年5月、ついに厚生労働省から「脳脊髄液漏出症診断基準案」(ガイドライン)が国に提出されました。これは国が「外傷を契機とした脳脊髄液減少症の病態」について推論上認めたことを意味します

そして、ようやく 2016 年4月1日から、「脳脊髄液減少症」のうち「脳脊髄液漏出症」の治療法の「硬膜外自家血注入療法(いわゆるブラッドパッチ療法)」が保険適用されることになりました。公明党公式WEBサイト→「ブラッドパッチ保険適用へ

保険適用される治療法とその条件

保険適用となる治療法は、特定の条件を満たす必要があります。ブラッドパッチ療法が保険適用となるためには、脳脊髄液減少症と確実、または確定と診断される必要があります。

しかし、すべての治療法が保険適用となっているわけではありません。たとえば、脳脊髄液減少症に対する新しい治療法や一部の高度な治療法は、現在のところ保険適用外です。この場合、自己負担が発生となります。

有効率の高いブラッドパッチ療法

では実際に、脳脊髄液減少症と疑われる症状が現れた場合、どのように対処したら良いのでしょうか?

発症早期の場合には、まずは、安静にして、水分補給という保存的加療が有効です。経口補水液「OS-1(オーエスワン)」が推奨されています。

この保存的加療の効果が不十分な場合には、ブラッドパッチという、髄液を包む硬膜の外に自分の血液を注入して、髄液の漏出を止める治療を行うこともあります。詳しくは「むち打ち症と勘違いされる「脳脊髄液減少症」という病気とは」でご紹介しています

この脳脊髄液減少症に対するブラッドパッチの有効率は約75 %で、特に思春期発症症例では 90 %以上(特に発生から治療までの期間が5年以内の場合)の治療効果が認められています。

自賠責保険に関する判例

自賠責保険において脳脊髄液減少症が認められるためには、以下の要件が重要です。

  • 事故との因果関係: 脳脊髄液減少症が交通事故によって引き起こされたことを証明する必要があります。
  • 診断の明確性: 医師による診断が確定しており、症状が交通事故によるものであることが医学的に証明される必要があります。

例えば、以下のような判例があります。

  • 判例1: 事故後の症状悪化と脳脊髄液減少症の認定
    このケースでは、交通事故後に脳脊髄液減少症の症状が出現し、医療機関での診断により病状が確認されました。自賠責保険は、事故と症状の因果関係を認め、補償を決定しました。
  • 判例2: 脳脊髄液減少症の治療が自賠責保険で認められたケース
    交通事故によって脳脊髄液減少症が発症し、適切な診断と治療が行われた結果、症状の改善が見られた事例です。このケースでは、自賠責保険が治療費の一部を認める決定をしました。

自賠責保険への請求方法

  1. 診断書の取得: 脳脊髄液減少症の診断書を取得します。
  2. 保険会社への申請: 自賠責保険の保険会社に診断書と治療に関する詳細を提出します。
  3. 因果関係の証明: 交通事故との因果関係を証明するための証拠を準備します。

しかし、脳脊髄液減少症は、事故との因果関係が認められにくいため、難しいことが多いです。実際、後遺障害認定がされることは少なく、認定された場合でも、首の痛み(頸椎捻挫)として「14級9号」といった軽い認定が一般的です。適切な補償を受けるためには、専門の弁護士に相談するのが賢明です。プロの力を借りて、しっかりサポートを受けましょう。

むち打ち治療協会の取り組み

脳脊髄液減少症 高橋浩一先生 勉強会脳脊髄液減少症は、むち打ち症だけではなく、「うつ病」「怠け病」と誤解されがちですが、その診断と治療には専門的な知識が不可欠です。このような状況を危惧し、少しでも適切な診断を広めるために、当協会では様々な取り組みを行っています。

1. 専門知識の提供

当協会では、脳脊髄液減少症についての専門的な知識を深めるため、高橋浩一先生によるセミナーを公開しています。このセミナーでは、認定院の施術家が脳脊髄液減少症の知識を学び、症状に対する理解を深めています。

2. 迅速な検査とサポート

交通事故によるケガの治療中に脳脊髄液減少症が疑われる場合、患者さんには迅速な検査をお勧めし、適切な診断と治療を受けられるようサポートしています。これにより、患者さんが必要な治療を早期に受けることができるよう配慮しています。

3. 高橋浩一先生との連携

脳脊髄液減少症治療の権威である山王病院の脳神経外科部長、高橋浩一先生と協力関係を築いています。これにより、専門的なアドバイスや優先的な処置を受けることができ、患者さんが一日でも早く回復できるようサポートしています。

4. 患者さんへのサポート

当協会では、脳脊髄液減少症に関する疑問や不安を抱える患者さんに対し、認定NOP法人 脳脊髄液減少症患者・家族支援協会と協力関係を築き、専門的なサポートを提供しています。

脳脊髄減少症患者専用のサポート協会

認定NOP法人 脳脊髄液減少症患者・家族支援協会

認定NPO法人 脳脊髄液減少症患者・家族支援協会は、脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の患者さんとそのご家族を支援するために設立された団体です。日本ではまだ珍しい疾患である脳脊髄液減少症について、専門的な知識を広めるとともに、患者さんへの支援を行っています。活動内容に関しては、「脳脊髄液減少症サポートの頼れる味方、認定NPO法人 脳脊髄液減少症患者・家族支援協会とは」で詳しく解説していますので、そちらもご覧ください。

TEL.042-325-8225(FAX同) お問合せ時間(平日のみ) PM 1:00~PM 5:00
http://www.npo-aswp.org/

 

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